高校を卒業し、上京した。卒業間際まで乗っていたRZ50は友人に売った(後にそのバイクを乗っていた人間が事件を起こし、事情聴取を受けたことがある)。東京での生活は希望と刺激に満ちていたが、当然金もないのでバイクのない生活はいた仕方なかった。
それでも、しばらくすると疼いてくる。町のバイク屋を覗きはじめると、もう我慢できない。バイクが欲しい、とうわ言のように言っていたら…当時付き合っていた彼女が「買ってあげようか?」なんて言う。年上のOLで貯金があるから買ってもいい、という。
あぶない。
あぶなかった。
人の金で買ったバイクなんて、
そんなものに乗ったら魂を売り飛ばしたのと同じだ(笑)。
その一言で目が覚めた僕は、ローンを組んで新車のRZ250Rを買った。攻める峠は無かったけど、深夜の都内を駆け回った。その頃は、信号で隣に並んだバイクと即席ゼロヨンを仕掛けまわってた。直線で負けても、すり抜けが上手けりゃ勝った気になれた。
渋谷から町田へ向かうR246、山手線ガード下の交差点をシグナルダッシュして、路駐が連なる左車線と渋滞列の間を猛スピードですり抜けていた、その瞬間。
わき道から進入してきた車の右車輪に突っ込んだ。
ボンネットを飛び越して身体だけが飛んでいく。
メット越しに流れる路面が迫ってくる。
本当に、映画みたいに、スローモーションでアスファルトが迫ってくるんだ。妙に冷静に色んなことを考えている自分がいた。
やべえ、死ぬかな。このあと痛いかな。なんでアスファルトってこんなにザラついてんだ。削れたら痛いじゃねえかよ。まだ落ちないのかな。ゆっくり飛んでるのか?なわけねーな。おかしいな、俺何考えてんだろ。
その後やってきた衝撃から時間は元通りになる。頭をガンガン打ちながら路面を滑って、しかし奇跡的に脇の車の列とは接触せず、ケガは打ち身と擦り傷で済んだ。
RZRは全損だったが保険金やら見舞金やらで結構な金が手元に残ったから新しいバイクを買う事にした。通勤にもツーリングにも帰省にも、毎日のように乗っていたRZR。50ccでは分からなかったバイクの奥深さや素晴らしさをお前には教えてもらった。
Keep On Riding !
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